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学校法人武蔵野大学 薬学部 さま

VR技術で変わる薬剤学習。
薬学共用試験を見据えた実践的なスキル習得を、VRシステムでサポート。

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2024年に創立100周年を迎える伝統校ながら、新学部創設など、果敢な挑戦を続ける学校法人武蔵野大学(東京都江東区)。13学部におよぶ広範な学びの一翼を担う薬学部でも、2023年、薬学教育界全体の注目を集める新システムを導入していた。
それは、薬学部とQTnetが共同開発した「VR(バーチャルリアリティ)による調剤技術学習支援システム」。開発コンセプトは、自学自習を通じた調剤技術の習熟度向上。すでに有意な使用効果を示すデータも現れている。
調剤技術の習熟という薬学教育界共通の課題解決に向けて、同システムがいかに貢献できるか。期待は高まるばかりだ。

武蔵野大学が導入した「VRによる調剤技術学習支援システム」。
薬剤の量や色の変化をリアルに表示し、学習者の発話や視点を認識するなど、調剤現場に即した仮想環境で反復学習をサポート。剤技術の習熟という薬学部年来の課題をQTnetが真摯に受け止め、NESICを加えた共創を通じて実現した価値あるソリューションだ。
武蔵野大学教授集合写真

VR技術を活用し、調剤手技向上を見据えた反復学習ツールを開発

調剤技術の習得は、大学における薬学教育の根幹をなす学びのひとつだ。
武蔵野大学薬学部でも、2年次に12コマもの基礎調剤実習を設定。さらに薬学共用試験が実施される4年次には、調剤実技を含む客観的臨床能力試験(OSCE)に向けた手厚い実習カリキュラムが組まれている。それでも広範かつ精緻な調剤技術の習得には不十分で、実習で学んだ実技を学生自ら反復練習して習熟度を高める自学自習環境の構築が、年来の課題となっていた。
そんな中、薬学部で特任准教授を務める髙尾良洋氏は、VR技術に着目する。
「ある展示会でワクチン製造にVR技術を活用したシステムを知り、調剤実習にも応用可能と考えて、新技術や新領域の開拓に積極的なQTnetさんに開発を打診しました」
武蔵野大学 薬学部 特任准教授
高尾 良洋 氏
このような経緯で2020年初頭、薬学部とQTnet、シスム構築でQTnetと協働するNESIC(NECネッツエスアイ株式会社)を加えた3者による共同開発がスタート。2022年末にはプロトタイプモデルが完成し、2023年夏から学生への貸与が始まった。
処方箋に指定された薬剤を調剤棚から取り出す際、薬品名を繰り返し声に出して確認する「三回呼称」を行うなど、調剤の評価ポイントは細部に渡って設定されており、反復学習で心技体のルーティンを身に付ける必要がある。VRシステムでは、学生がVRゴーグルを装着し、仮想空間でコントローラーを操作しながら調剤実務に臨む。呼称漏れなどがあればアラートが鳴り、ログを通じて所要時間などの精緻なデータも取れる。使用する時間や場所を選ばないVRシステムは、まさに同学部が求めていたソリューション。とはいえ、3社による共創が形になるまでには、いくつもの課題を乗り越える奮闘があった。
VRゴーグルを装着し、コントローラーを操作。
学生は時間や場所の制約を受けることなく、好きなときに反復学習に取り組める。

幾多の課題を共創で乗り越え技術向上に役立つ新システムが完成

開発当初、調剤実習現場でのVR活用例は全国的にも皆無。当然、QTnetにとっても初めてのチャレンジだ。ゼロベースから始まった開発は、髙尾氏の要望をQTnetが整理し、NESICがプログラムを組む共創の枠組みで進んだ。期せずしてコロナ禍が重なり、実習時間の確保が困難になる中、VRシステムへの期待がいっそう高まった点も見逃せない。
開発プロセス全体では、2つの山場があった。ひとつは実習見学。髙尾氏が振り返る。
「私から提案して、2年次の実習を見てもらいました。QTnetさんは、学生が間違えやすい作業、資料では気づかないポイントなどを把握し、必要な機能をはじめ開発の急所が整理できた、とおっしゃっていました」。たとえば水剤の液量確認に際し、視線の角度がメートグラスの目盛りに水平になっているかどうかを判定。こうした実践的な機能設定の数々も、見学で得た現場感覚のたまものといえよう。

もうひとつは「VR酔い対策」だ。
「初期段階では実習室の実際の画像を使用したのですが、リアルすぎました。薬品名を確認する際に目を凝らすと、どうしても体も同時に動くんですね。この動きを重ねるうちに、船酔いに似た状態になってしまう。これは想定外でした」(髙尾氏)
この予期せぬ課題は、画像の構成要素を整理し、薬品名を大きく読み取りやすくする対処で解決。言葉にするとシンプルだが、のべ1年に及ぶ試行錯誤の成果だった。
左:武蔵野大学 薬学部教授 学部長 市瀬 浩志 氏
右:武蔵野大学 薬学部教授 臨床薬学センター 三原 潔 氏

開発は、改良版のテストを毎月行うペースで進行。そうして2023年6月には初号機が完成し、4年次生全員がいつでも使えるよう、一学年全員分を用意したところ早々に多くの希望者が使い始めた。8月のオープンキャンパスでも、高校生たちが先を争うように試したという。

「全体の所要時間や各プロセスの操作に何秒かかったかなど、細かなデータ解析も行っています」と話すのは、髙尾氏とともに共創プロジェクトを推進する三原潔教授。
「中には4回使用し、回を追うごとに所要時間が短縮されたなど、VRシステムの効果を如実に示すデータも。使用後のアンケートにも、手順がはっきりわかるなど、学生たちの歓迎ぶりが表れています」
今後、学生の利用が広がるにつれて、OSCEの評価との相関性など、より有意義なデータも蓄積されるだろう。
VRシステムは常時貸し出し可。多くの学生が使えるよう、2023年度4年次生の人数に合わせて126台用意している。

調剤技術学習支援システムの様子

デジタル技術の可能性を貪欲に追求
VR共創プロジェクト、第二章へ

初号機の供用が始まったとはいえ、共創プロジェクトはまだまだ途上。新たな課題も見つかっている。重量感や匂いなど、現状では数値化困難な項目をなんとかして組み込めないか、そんな挑み甲斐十分の中長期的テーマも少なくない。最後に、VRシステムが薬学教育の将来にもたらす可能性について、市瀬浩志学部長に聞いた。
「今後、医療現場や調剤現場でのVR活用が確実に進展するでしょう。薬学部でも、VRだけでなくICTの実践的な知見を得た薬剤師の育成を重視する方針です。手技などの基本的な部分だけでなく、教員側の評価手法の構築、さらには学生の主体的な参画意欲や企画立案力などの評価、いわゆる「アウトカムの可視化」にも、VRをはじめとするデジタル技術の活用を期待しています」
共創プロジェクト第二章は、始まったばかりだ。

薬学教育界の課題解決につながる画期的なソリューション

大学における薬学教育課程では、4年次の薬学共用試験と卒業時に受験資格が得られる薬剤師国家試験を見据え、6年間で習得すべき知識・技能が明確に定められている。4年次の段階では、薬学共用試験に向けた調剤技術、とりわけOSCEで試される調剤手技の習得が焦点となる。調剤技術を習得するには、実習とは別に、繰り返し実践を重ねる反復学習が不可欠。調剤実習終了後、臨床実習が始まるまでの期間が長いことも、反復学習の重要性を高めている。今回導入されたVRシステムは、こうした課題を包括的に解決するための画期的なソリューションとして、同大学の高い評価を得ている。

学会発表でもQTnetとコラボ
まだまだ広がる共創の成果

VR技術を応用して生み出した今回のシステムは、日本の薬学教育界全体で見ても前例のないチャレンジングな開発だった。その開発パートナーにQTnetを選んだ理由について、髙尾氏は「QTnetさんには、新しい技術や未知の領域に挑む進取の気性を感じていました。VR以外にも、最新の技術情報を常に届けてくれます」と説明する。
「新しいチャレンジですから、依頼する側の私たちも含めて、ゼロから開発ポイントを見極め、課題に直面するたびに力をあわせて解決を図る。この共創スタイルを最後まで貫いて、今回のシステムが完成しました」(髙尾氏)
今回のプロジェクトでは、プロトタイプが仕上がった直後の2023年春に薬学会で発表を行っているが、薬学部をはじめとする同大学関係者とともに、QTnetも発表者に名を連ねた。共創スタイルを象徴するエピソードといえるだろう。
「現在では薬科大学や他大学の薬学部でもVRの活用が始まっていますが、評価まで含めたトータルな取り組みでは本学は一歩先を行っており、今も2024年春の2回目の学会発表に向けて準備を進めているところです。もちろん、QTnetさんの役割にも大いに期待しています」(髙尾氏)
VR共創プロジェクトがどこまで広がるか。その推移と成果に注目したい。

 

Our
Solution

「QTnet × NESIC」のVRシステム提案2つのPoint!

  1. NESICのシステム構築力を生かした共創
    VRシステムにおいては、QTnetが要望を集約して開発課題を整理するプロダクトマネージャー的ポジションに立ち、VR、DX、メタバース等の新規分野に積極的に挑むNESICがシステム構築の実務と品質保証を担います。

  2. NESICの販売網を生かした全国展開
    QTnetは九州に基盤を置くソリューション企業ですが、NESICは日本全国に販売拠点を有しています。そのネットワークを最大限に活用することで、全国の薬学教育現場のニーズに応えることができます。

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調剤技術学習支援システム

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